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原理主義者の中で暮らして

私は北西フロリダの大学院で勉強していたのだが、ある時、同じ寮の女子学生が「素晴らしい伝道師が来るので、聞きに行かないか」と誘ってくれた。

昔、シンクレア・ルイスの「エルマー・ガントリー」を読んで以来、米国南部の保守派キリスト教伝道師に興味を持っていたので、良い機会だと喜んで行ったのだが、伝道師の説教よりも、参加していた普通の信者達の会話に驚いた。

ある若者はずっと麻薬を止められなかったのだが、「ある時にキリストが僕に話しかけたので止めることができた。今は伝道師になる勉強をしている」と語った。

周りの人々は、彼の話を事実として受け止め、非常に感動していた。殆んどの人々はまじめで悪い人柄では無さそうだったが、もし、私が、キリストが話しかけたことに対して疑問を述べたら、袋叩きにしそうな目をしていた。

ロス・アンジェルスに行って、ある日本人女性の夫(白人)に、この話をして、「南部バブティスト派信者の中には、悪魔の存在を最初に信じていて、悪魔から救ってもらうためにキリストを信じる人々がいるのではないか」と言ったところ、

彼は「僕の家族はその人々と同じタイプの人間で、僕はキリスト教徒ではない女性と結婚したんで、家族は僕の妻を悪魔だと見なしている」と言っていた。

父親のブッシュ元大統領は原理主義者のようには見えないが、息子のほうは「キリストが直接に話しかけてきたから、イラク攻撃を決めた」と言いそうな顔をしている。

ユダヤ教の原理主義者たちは黒い服を着て長いひげをはやしている。この人々はイスラエルでは税金と兵役を免除され、国費の潤沢な援助を受けて極めて政治的な影響力が強いそうだ。

キリスト教徒でもユダヤ教徒でも原理主義者は、激烈な言葉で敵を非難し、戦争をあじるのだが、自分たちは戦場へ赴こうとはあまりしない。

これは、太平洋戦争の頃の日本の右翼も同じだったようだ。
# by riskyage | 2006-08-05 17:33 | 国際危機

旧約聖書と原理主義

何故、イスラエルがレバノンやパレスチナで女性や子供を平気で大量に殺戮しているのだろうか?これは旧ユーゴスラビア連邦で起こったセルビア人による民族浄化運動とも関係があるだろう。

ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒の共通の聖書は旧約聖書であるが、この旧約の神は非常に残酷な神である。

何しろ、忠誠度を確かめるために、父親に最愛の息子を殺して、供物として捧げるように要求するのだから。このアブラハムの例だけでなく、旧約はいたるところで目をそむけたくなるような残酷な神の命令が出てくる。

時代が進むにつれて、信者たちもあまりにも厳しい神に寛容を求めるようになったが、最近、恐ろしいのは、聖書の教えを文字通りに守ろうとする人々が増えてきていることである。

日本ではイスラム原理主義が有名だが、米国ではキリスト教根本主義とか原理主義とか呼ばれる宗派が非常に強い勢力を持っている。特に南部バブティスト派が代表的だ。ブッシュ大統領はやや穏やかなメソジスト派には属するが、イラク攻撃を見ると、彼は原理主義者なのではないかと思われる。

原理主義者は、神の掟を厳守する自分は正義だと考え、自分の主張に反対する人々は不正義だから抹殺してもかまわない、いや抹殺することこそ、神の正義にかなうと考える。だからこそ非戦闘員を殺しても良いのだ。

ナチスも共産主義者もユダヤ・キリスト教の影響を受けた人々だから、大量虐殺を躊躇わなかった。

この不寛容さは他の宗教、例えばヒンズー教などにも影響が及びつつある。今、何とかしないと暗黒時代が来るのではないだろうか。
# by riskyage | 2006-08-03 22:36 | 国際危機

自由からの逃走と日本社会

東京新宿の花園神社宮司の片山文彦氏は精神科医でもあり、宗教と科学についてきちんとした教育訓練を受けた人物である。しかも花園神社という日本でもっとも猥雑な場所の中の聖なる場所で、新しい芝居などが生まれることを支援してきた人だ。

花園神社社務所では毎月、神道時事問題研究という小冊子を発行しており、片山宮司は非常に広範囲の専門家との対談を掲載されている。今月の明星大学教授の正慶孝氏との対談で極めて重要だと思ったのは、日本でも「自由からの逃走」が起こっているという指摘だった。

ご存知のように、エーリッヒ・フロムは「何故、ワイマール憲法によって完全な民主政治が保証されたはずのドイツ社会にナチズムが広がったのか」という問題を考えるために「自由からの逃走」を書いた。

今の日本が「自由からの逃走」に向かっていることは、多くの人々が同意されるだろう。日本は非常に自由だが、その自由は与えられたものであり、自分が努力して勝ち取ったものではない。また、その自由は他者によって取り上げられるものだという認識もない。

しかし、実存主義哲学者が苦しんだのは、ユダヤ・キリスト教の神の実在を信じられなくなった後に、人間は何を信じれば良いのかということだった。神からの解放は、自分自身が神に代わって、何が正義で何が悪を自分で判断しなければならない。人間には重過ぎる責任だ。だから、考えない。異邦人のようにせつな的に生きるしかない。

日本人は絶対神を知らない。善悪を自分自身が決めなければならない重荷を、多くの人々は自覚していない。幸い、殆んどの人々は究極の選択を迫られることが、今まではなかったが、自由と責任の関係を認識することから目を背けてきたためか、今の日本はカミュの「異邦人」のように、「太陽がぎらぎら輝いていたから殺人を犯す」人々が増えてきているようだ。

しかし、オウム真理教を考えて頂きたい。もっと凄いカリスマが出てくれば、どれだけ多くの人々が自由から逃げて、独裁者の前にひれ伏すのではないか。
# by riskyage | 2006-07-30 12:07 | 危ない社会

日本の防衛とテクノロジー戦略

北朝鮮のミサイル発射問題で鮮明になったのは、日本には米軍が駐留しているからこそ、日本国民はのんびりしていられるということだ。北朝鮮だけでなく、中国もロシアも日本相手に攻撃すれば、米国の核ミサイルの報復の可能性があることを知っている。もし、米軍が引き上げたら、北朝鮮はミサイルを日本に撃ち込むことに、あまりためらいを感じないだろう。

日本は米国の金庫役を果たしているから、米軍が日本を守る理由がある。米国が「世界の警察官」である限り膨大な経費がかかるから、日本からの資金が必要だ。しかし、何度も書いたように、米国が「世界の警察官」であることが、米国民にとってあまりにも大きな負担になってきている。

米国が「世界の警察官」であり続けることは、多分、世界中の殆どの国々が望んでいる。米国に敵意を持つイスラム諸国でも、警察官がいない世界は恐ろし過ぎて喜ばないだろう。

世界貿易に依存している日本は、米国が「世界の警察官」であることから最大の恩恵を受けている国だ。何とか米国に全面的に頼るのではなく、米国の負担を減らして自国およびアジア防衛の一角を担うだけの努力をすべきだろう。特に日本の得意なエレクトロニクスやロボット技術、通信技術などを活用して、問題が大きくなる前に防ぐ努力をすることが重要だ。

日本の企業は世界中に工場を作っているが、テクノロジーとは思想体系なのである。私は技術移転に30年以上関わったが、工場設備の設計や保全など、また、ソフトウェアの設計などには、設計者の思想がかなり反映される。こういう形で入り込んできた思想は、受け入れるほうはなかなか気づかないし、教えるほうも意識していないから、抵抗が少なく、しかも非常に長く根付くものである。

これは日本が明治以来欧米の技術を受け入れてきたがために、日本の科学技術者の考え方自体が江戸時代以前と非常に異なってしまったことを考えると理解できるだろう。

日本人が設計した機械設備やソフトウェアを使う人々は、自然に日本人の考え方に親しみや好意を持つものだ。防衛戦略を立てる時に、この点を考慮すべきだと思う。

この点については、もっと掘り下げて考えたい。
# by riskyage | 2006-07-06 11:33 | 国際危機

暴動が起こらない街

何故、世界中の何処でも働ける優秀な人々が失業後もサン・ディエゴに留まったのだろうか?

第一に、米国の大都会としては非常に安全な街で、安心して子供を育てたり、老後を過ごすことができるからだろう。
第二に、地中海気候で夏涼しく、冬暖かい上に、海・山・湖など自然が豊富であること。
第三に、教育・医療・知的な娯楽機関が充実していること。

などが上げられる。

人口130万人を超え、全米でも7位の大都市なのだが、一見すると田舎町に見える。数万人ずつのコミュニティが入り江や湖、山などで区切られているためだ。

愛想が良いことでは全米でも3本の指に入ると言われるし、確かにロス・アンジェルスのとげとげしさとは全く違って、皆にこやかだ。

ロス・アンジェルスは大都市にしては美術館や博物館が貧弱なのだが、サン・ディエゴは素晴らしい美術館・博物館がある。米国では、これらの施設はお金持ちの寄付金と一般人の無給ボランティアによって支えられており、優れた知的な娯楽機関が多いということは、街の住民のレベルが高いことを示している。
# by riskyage | 2006-06-12 18:10 | 危ない社会